ここにとあるナーフがあります。
1990年代に販売されていた旧式ナーフの一つで、弾帯を使うベルト給弾式のブラスターなんです。いわばバルカンの先代と言いましょうか。
発射は横にあるクランプレバーを回すタイプ。ガガガ!と激しい音を立ててピストンが駆動します。なかなかのキワモノっぷりに心奪われませんか?
古いナーフ「レイザービースト)をレストア
こんなキワモノにも関わらず真っ先にレビュー記事書かないのには事情がありまして…かなりのジャンク品なんですね、これ。
まず弾帯が欠品です。バルカンのものとは規格が違うので使用できません。軟質プラ製のパーツが連なったようなタイプで、経年劣化しやすく切れやすい、非常に脆いものだったそうです。今でも中古の弾帯が入手可能ですが、それらは亀裂が入っているものばかりです。
次にシール類の破れ、剥がれ。前オーナーが適当に貼ったのかわかりませんが一部シールの場所が間違っています。しかも端っこが剥がれてボロボロに。貼り忘れと思われる部分もあります。
動作自体は恐らく大丈夫な模様。少し引っかかりとカラカラ音があるのが気になりますが…
以上のような状況ですので、今回は外見のレストアをしていきたいと思っています。
レストア ~弾帯の作成~
レストアには弾帯とシールの製作が必要です。今回は弾帯の作成していくことにしました。
弾帯の作成
一応、同じ規格の弾帯はいくつかのブラスターでも使われていました。といっても15年以上前の製品ばかりなので新品での入手は絶望的です。柔軟性のあるプラ素材ですので亀裂が入っているものが大半ですし、送料を考えると驚くほど高額になります。
というわけですので今回もまた3DプリンターとCADを使ってパーツのレプリカを作成していくことにします。
wikiaより。このように軟質プラ製の連なった弾帯を使用します。ダーツ同士の間隔が広いためにバルカンや他社ブラスターの弾帯は使えません。
こっちがバルカンのベルト。
こっちがレイザービーストのベルト。
形状が全く異なりますね。また素材の違いもあり、バルカン用はかなり硬質のプラスチック製です。ベルト部分は布地。レイザービーストは全体が軟質プラ製のようです。
まずはモデリング
私の持っている3DプリンターはABSではなくPLAという硬いフィラメントしか使えないことから、パーツ全体の柔軟性獲得のためにヒンジ部を設けています。ABSを使えるプリンターならそのまま連結した状態で作れるかもしれませんね。
データはFUSION360で。
試作品をいくつか作ってこの形状に落ち着きました。ヒンジは金属ピンを使用することにします。
印刷はおおよそ8時間かかります。最初は1個ずつ作っていたのですが、あまりに時間がかかりすぎるので3つずつのデータを作成しました。
試作品を含めて現在6個。製品では25連だったそうなのであと19個…
本来は旧ダーツなのですが、今回作成したものは現行のエリートダーツ対応となっています。
意外としっかりしたパーツになりました。
試射してみました
構造上、最初の1発は発射されないようになっています。というか弾帯をリング状につなげて使用するのだそうです。今はまだ6本しかないので長さが足りず、バルカンのように撃ち切ったら落下してしまいます。
動画を見ていただければわかるのですが意外と強く飛ぶんですね。流石に対人戦には難しいですけれども、ちょっとした遊びには十分に使えるかもしれません。
レストア ~シールの貼り直し~
3Dプリンターで部品を作るには1個数時間かかりますので、その間にシールの方のレストアを行います。
シールの作成・まずはデータ取り
出来るだけ元のシールを使う方向でいきたいのですが、欠損していたり破れている部分が多いので印刷して貼り直すことにしました。
背びれ?の部分のシールがありません。本来はここに貼るための台形状のシールが付属してありました。
目の部分。ここも重ねて貼られていること、はみ出た部分がボロボロになっていることからも新規作成が必要です。幸いにも大部分が残っていますのでデータはそれを再利用します。
デジカメで撮影→レタッチソフトで修正
シール類のレストア(復元・再作成)はPhotoshopを使用します。
Photoshopにはスタンプツールという使いやすいツールがあります。任意の場所の画像を別の場所に貼り付けることのできるツールなのですが、これを使うと傷などを簡単に消すことが出来ます。
例えばこういう汚れがいっぱい付着した部分。スタンプツールで綺麗な部分の色を上にのせて行きます。
右側の枝の部分の汚れが消えました。まだ青い部分の黄色い汚れが残っていますが…
このように目立たなくなります。普通のペイントツールのエアブラシで使った場合では、このようにテクスチャのある場所の修正は非常に面倒です。
端っこのボロボロになった部分。ここはエアブラシツールとスタンプツールで。
おおよその大きさを想像しながら色を置いていきます。これを繰り返すとシール全体の元データが作れます。
修正前と修正後
このようにボロボロだったシールですが…
このように復元できました。
更に緑のシールも同じように修正していき、最後にパスで切り抜いてサイズを合わせて印刷、カットすれば完成です。
切り抜きはカッティングプロッター使用。もちろんカッターでも問題ありません。
私はちょっと古いですがグラフテックのCC330-20を使用。今は後継機のカメオ2が出ているようです。これがあるとアウトラインをある程度、自動で切ってくれるので大変楽になります(力加減はしてくれないので非常に繊細なパーツは大抵の場合に引きちぎってくれますが…)
出来たら貼り替え
シールが出来たらさっそく貼り替えます。まずは既存のシールを剥がします。
本当にボロボロですね。ただこのシールも大事なものですので綺麗に残すことにします。ここで登場するのがドライヤー。
少しずつ温めながら剥がしていきます。無理しないようにゆっくりと。ドライヤーは警告シールを剥がすのにもおすすめです。
制作したシールを糊で貼れば完成です。シール用紙でなくともスティック糊でしっかりとくっつきます。跡残りしませんし。
個人的にはこの台形糊がオススメです。しっかり接着できるのは当然ですし、実は3Dプリンターの剥がれ防止にも使えるんです。印刷するガラス面に塗っておくと「パーツの剥がれ」が防げます。
出来たシールを貼って完成
このような状態が…
こうなります。
何よりもデータさえ作っておけば微調整も簡単。印刷含めやり直しがいくらでも出来ます。
プリンターのインク切れのため、ひとまずここまで。ボロボロだったシールがキレイになるだけでも不思議と生き返ったような気がします。
フォトショップも体験版で1ヶ月使えますし、スタンプツールだけならフリーソフトでもあったはず。簡単なレストアですので是非。
完成!
完成したのがこちら。
往年の迫力ある姿が蘇りました。
白い透明フィラメントを使ったので白い弾帯になりましたけれども、黒や銀色のものを使えばもっと馴染むはずです。
古い玩具でも手をかけてあげればきちんと応えてくれますので是非。